紫式部 源氏物語 野 分(のわき)-第二十八帖
この年は野分(台風)が例年よりも激しいようで、空の様子が急変して風が吹き始めました。やがて風は激しさを増し、南の御殿でも花の枝も折れるほどで、紫上は端近くに出て、前栽(植え込み)の様子を心配そうにご覧になっておられました。 そこに夕霧がお見舞いにおいでになりました。風がひどいので屏風なども畳んで隅に寄せてありますので、すっかり中が見渡せます。廂(ひさし)の端に清らかで気品のある方が座っておられました。そのお姿はぱっと輝くように美しく、樺桜の花が咲き乱れるようです。