紫式部 源氏物語 藤 袴(ふじばかま)ー第三十帖

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新源氏物語/Melodia (Blu-ray Disc) - 宝塚歌劇グッズの専門店〜宝塚アン
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尚侍(ないしのかみ)として宮仕えをするように……と、誰もがお勧めなさるのですが、

玉鬘は、「すでに帝のお側におられます中宮や女御に、辛い思いをおさせしては心苦しいですし、世間からは軽く見られて、辛い日々になるに違いない……」と躊躇っておられました。

実の父親も、源氏の君に遠慮をなさって、手元に引き取るなどはなさいませんので、かえって実父を捜し当てた後の方が、お悩みも加わるようでした。

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大宮が亡くなり、薄鈍色の喪服をお召しになった優雅なお姿で、宰相中将(さいしょうのちゅうじょう)(夕霧)が玉鬘のところを訪れました。

姉弟でないと分かった今も、御几帳を隔てただけで、直接にお逢いになりました。

夕霧にとっては、あの野分の朝の美しいお姿が鮮やかに目に焼きついて、恋しく想われますので、父君の言葉をお伝えした後は、

平静でいられなくなり、御簾の下から花を差し入れ、御心を訴えなさいました。

同じ野の露にやつるる藤袴 あはれはかけよかことばかりも

(訳)貴女と同じ野の露に濡れて萎れている藤袴です
やさしい言葉をかけて下さい、ほんの口実でもいいですから……

玉鬘は「面倒な……」と奥に入られましたので、大層お嘆きになりました。

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夕霧は源氏の君の御前に参上なさいました。

「玉鬘は宮仕えを躊躇(ためら)っておられるようでございます。中宮は尊い地位の方ですし、弘徽殿の女御も立派なお家柄の上、帝のご寵愛を受けていらっしゃいますので、

入内しても肩を並べることは難しく、かえってお気の毒に思われます……」と申し上げますと、「確かに……これは私の思い通りになることでなし……」と仰いました。

更に、「内大臣が『源氏の君はまず宮仕えに出して後に、ご自分のものにしようとお考えに違いない』と噂をしておられるそうです」とお話しますと、

「やはりそうか。わが身の潔白をお知らせ申したいものだ……」と仰せになりましたが、内心「よく見抜きなさった……」と苦笑されました。

玉鬘の宮仕えは十月に決まり、帝には大層待ち遠しいことでございました。

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中将(内大臣の子息)は、玉鬘が実の姉弟とお分かりになって以来、募る想いをきっぱり捨て去り、今は、宮仕えの折に、ご後見役をしたいと望んでおられました。

内大臣の伝言を持って、この中将が玉鬘のところにおいでになりました。

今も女房を介してお話しなさいますので、恨めしくお思いになりながら、
「実の姉弟とは知らずに、遂げられない恋の道に踏み迷い、

御文などをお送りしてしまいまして……」と申されますと、玉鬘も、
「どのようにお返事してよいのか分からずに……」とお答えになりますのも、仕方のないことでございましょう。

月が高く上り、空の様子も美しい頃に、ご退出なさいますお姿は、大層上品でご立派でございました。

鬚黒の大将は大層人柄もよく、御歳二十三ほどになられ、普段から内大臣や中将と親しくなさっておいでになりました。

更に春宮の女御とはご兄弟ですので、皆からの信任も厚い方でした。

けれどもその北の方は、紫上の姉君ですのに「おばあさん」と呼んで大切にもせず、何とか離縁したいと考えておりました。

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源氏の君はこの大将のことを「玉鬘には不似合いの男で、結婚すれば気の毒なことになるのではないか……」と不安に思っておられました。

九月になり初霜が降りる頃、宮仕えが迫ってきましたので、玉鬘のところには沢山のお手紙が届きました。

鬚黒の大将からは「それでもいつかはと頼みにしておりましたが、何と儚い運命でしょう……」とありました。

兵部卿宮からは「たとえ帝のご寵愛を受けられましても、霜のように儚い私のことを忘れないでください……」と書かれていました。

それぞれに紙の色や墨つぎも美しく、香の匂いも素晴らしいものでした。玉鬘はどう思われたのか、兵部卿宮へのみお返事を書かれました。

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心もて 日かげにむかふ葵だに 朝おく霜をおのれやは消つ

(訳)自ら光に向かう葵(私)でさえ 朝降りた霜を自ら消しましょう……

宮の愛を感じておられる様子が窺えますので、兵部卿宮にとっては嬉しいことでございました。

( 終 )

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