もくじ
三十一帖 真木柱(まきばしら)
玉鬘を強引に手に入れたのは髭黒の大将だった。源氏と冷泉帝は残念がるが、玉鬘は予定通り尚侍として出仕することとなった。有頂天の髭黒にくらべ、玉鬘は優雅な源氏や蛍の宮を思い嘆き悲しんだ。
髭黒の正妻、式部卿の宮の娘は、かつては美貌を誇っていたが物の怪に捕らわれ、心身ともに病み苛まれていた。哀れに思う髭黒はあれこれと気をかけていたが、ある日玉鬘を訪れようとしていた時に、錯乱した妻に灰を浴びせかけられる。それ以来髭黒は妻を避ける。
玉鬘の件を聞いた式部卿の宮は、娘を自邸へと迎えるための車を差し向ける。髭黒との仲を断念した娘は、息子と娘を引き連れ式部卿の宮邸に帰る。慌てた髭黒だが、連れ戻せたのは男君だけだった。
翌年玉鬘は出仕する。帝との仲を心配する髭黒は強引に自邸に連れ戻す。髭黒の子どもたちも玉鬘に懐き、玉鬘はその後男子を出産する。
三十二帖 梅枝(うめがえ)
源氏は明石の姫君の裳着の準備をする。東宮の元服も迫り、元服後、姫君が入内できるよう支度を調える。公私ともに落ち着いた源氏は薫き物合わせを思いつく。名香が集められて催された薫き物あわせ後、明石の姫君の裳着が行われた。腰結役は秋好中宮自らが務めた。
二月東宮が元服した。明石の姫君の異例の権勢を恐れ、他の姫君の入内が遠慮されことを嫌って、源氏は姫君の入内を延期した。
一方内大臣は、可愛い盛りの雲居雁が家でくすぶっているのを見て思い悩む。雲居雁は夕霧の縁談の噂を聞き、恨みの歌を送る。
三十三帖 藤裏葉(ふじのうらば)
夕霧の縁談話を聞き、内大臣は焦燥する。三月、故大宮の三回忌で内大臣は夕霧に歩み寄り、四月、内大臣邸で催された藤の宴で夕霧と雲居雁は結婚する。
明石の君の入内が決まり、紫の上は実の娘への思いを斟酌し、明石の君を姫の後見とする。入内を機会に、明石の君が参内し侍女として娘に付き添うことになる。はじめて対面した紫の上と明石の君はすぐに互いを認め合う。すべてを手に入れた源氏は出家を考える。
四十歳となり、源氏は准太上天皇、内大臣は太政大臣、夕霧は中納言に昇進した。十月、六条院への行幸が、朱雀院を伴って華やかに行われた。源氏や朱雀院は若かりしころ催された紅葉の賀に思いを馳せた。
三十四帖 若菜上(わかなじょう)
六条院への行幸後、病にかかり強く出家を望む朱雀院は、愛娘の女三の宮の行く末だけを気にかけていた。あれこれと候補者を考えた末、朱雀院は姫を源氏に託す決心をする。一度は固辞した源氏だが、正妻として姫を受け入れる。紫の上の心は激しく揺れるが、かろうじて冷静さを保っていた。
年が明け、玉鬘が源氏の四十の賀を催す。
二月中旬、女三の宮が六条院に迎えられた。源氏は紫の上とくらべ、あまりに幼い女三の宮にあきれ果てる。紫の上の苦悩は絶えず、その重苦しさから逃れるように、源氏は朧月夜を訪問する。
明石の女御が懐妊し、六条院に下がった。これを機に紫の上は女三の宮と対面し、六条院の秩序の維持に努める。
翌年三月、明石の女御は男児を出産。宿願をかなえた明石の入道は、山に入り、消息を絶つ。
春うららかな日、六条院で蹴鞠が催された。偶然にも猫が御簾を引き上げ、柏木が女三の宮を垣間見、懸想する。
女三の宮と柏木の秘密
三十五帖 若菜下(わかなげ)
女三の宮のことが忘れられない柏木は、東宮に頼み、女三の宮の猫を借り受ける愛玩する。
四年の月日が流れた。冷泉帝は東宮に譲位し、明石の女御が産んだ皇子が東宮となった。女三の宮は二品に叙され、源氏はますます丁重に扱う。明石の君、女三の宮と比して、自分の立場の心細さを痛感する紫の上は出家を志す。
女三の宮との対面を望む朱雀院のため、源氏は朱雀院の五十の賀を計画する。それに備えて、源氏は女三の宮に琴を教授する。年が明け、院の賀に先立ち、源氏は六条院の女性たちによる女楽を催した。その直後、紫の上は重病に伏し、二条院に移される。源氏は紫の上につきっきりで看護にあたった。
柏木は女三の宮の姉(落葉の宮)を妻としていたが、女三の宮に固執していた。源氏不在に乗じて、柏木は小侍従の手引きで女三の宮と密通する。そのころ紫の上は重体に陥る。調伏を続けると六条御息所らしき霊が現れ源氏は慄然とするが、紫の上はなんとか息を吹き返す。
紫の上は小康状態を保ち、源氏は六条院に戻る。そこで女三の宮の懐妊を知り不審に思う。源氏は女三の宮の部屋で柏木の手紙を見つけ、事の次第を知る。真相を知られたことに気づいた柏木は焦燥のあまり、病に倒れる。
延期が続いていた朱雀院の五十の賀の試楽が行われた。病をおして出席した柏木は、源氏から痛烈な皮肉を浴びせられ、重病に伏す。柏木不在のまま十二月に賀が催された。