もくじ
一帖 桐壺(きりつぼ)
いつの時代のことだったか、帝の寵愛を一身に受けるさして身分の高くない更衣(桐壺更衣)がいた。父である大納言もすでに亡くし、格別の後見もないため、帝の一のきさきである弘徽殿女御をはじめとする後宮の女たちから嫉妬されながら、
更衣は玉のような皇子を出産した。帝はますます更衣を愛したが、女たちからの嫌がらせもはじまり、それに耐えかねた更衣は病に伏せ、やがて亡くなった。帝は深い悲しみにくれた。
母亡き後、養育していた更衣の母も亡くなったため、若宮は再び参内した。美貌はもとより、学問、音楽まで神才を見せる若宮が政争の種になることを恐れ、帝は若宮を臣籍に降し、源氏の姓を与えた。
同じ頃、桐壺更衣に生き写しの藤壺の宮が入内した。帝の心は癒され、源氏も藤壺に亡き母の面影を求めた。帝の寵愛を受ける源氏と藤壺を人は「光る君」「輝く日の宮」と呼び讃えた。
十二歳となった源氏は元服し、左大臣の娘(葵の上)と結婚した。しかし、源氏は四歳年上の妻になじむことができず、ますます藤壺への思慕を強めていった。
二帖 帚木(ははきぎ)
長雨の降り続くある夏の夜のこと、源氏の宿直所に葵上の兄であり、源氏のよきライバルである頭中将が訪れた。頭中将が源氏に贈られてきた恋文を見つけたことから、やがて話は女性論になる。
そこに好き者として知られる左馬頭と藤式部丞が加わり「雨夜の品定め」が繰り広げられる。話の中で、源氏は頭中将が後見のない女性と通じ子まで成したのだが、正妻の嫌がらせを受けいつしか消えてしまったという話を聞く。
また、源氏は自分とは縁がなかった中流の女性の魅力を三人の経験譚から知り、中流の女性に魅力を覚える。理想の女性はなかなかいないと言う彼らの話を聞きながら、源氏は理想の女性、藤壺にますます思慕を寄せる。
翌日、源氏は方違えのため紀伊守の別宅を訪れ、そこで紀伊守の父の後妻・空蝉が居合わせていることを知る。中流の女性への興味を募らせる源氏は、その夜半ば強引に寝所に忍び込む。その後源氏は空蝉の弟、小君を召し抱え空蝉との再会を狙うが、自身の身の程を知る空蝉はそれを許さなかった。
源氏、十七歳の夏のことだった。
三帖 空蝉(うつせみ)
再訪しての誘いにもなびかない空蝉に源氏は固執する。小君の手引きで紀伊守の邸宅を三度目に訪れた源氏は開放的な様子の若い女(軒端萩)と碁を打つ空蝉を垣間見る。
若い女とくらべ見栄えはよくないが、源氏は空蝉に品のある慎みを感じる。夜、源氏は寝所に忍び込むが、それを察した空蝉は小袿を脱ぎ捨て寝所を抜け出した。
行きがかり上、源氏は空蝉と同室で眠っていた軒端萩と情を交わす。
翌朝源氏は空蝉が脱ぎ捨てた小袿を持ち帰り、歌に思いを託す。小君から歌を渡された空蝉は、源氏の思いに応えられない我が身の情けなさを歌に詠み、源氏の歌の端に書きつけた。
四帖 夕顔(ゆうがお)
空蝉にうつつを抜かしていたころ、源氏は六条に住む高貴な女の所に忍んで通っていた。宮中から六条に向かう途中、源氏は夕顔の咲く家に住む女(夕顔)と知り合う。
折しも六条の高貴な女との関係に気詰まりを感じていた源氏は、この女に耽溺していく。
近所の声が聞こえるような家での逢瀬に嫌気が差した源氏は、女を廃院に連れ出す。その夜、源氏は物の怪に襲われるような夢を見て、目を覚ます。
源氏は魔除けをさせたが、正気を失った夕顔はそのまま息を引き取った。
悲しみにくれる源氏は瘧病を患う。秋、病から癒えた源氏は、夕顔の侍女であった右近から、実は夕顔は頭中将との間に子まで成した女であったことを聞かされる。
空蝉と夕顔とのはかない縁に、源氏は物思いにふける。
五帖 若紫(わかむらさき)
十八歳の春、源氏は瘧病に苦しみ、加持を受けに北山の聖のもとを訪ねる。その夕暮れ由緒ありげな某僧都の家で可憐な少女(紫の上)を垣間見る。その少女は源氏が恋い焦がれる藤壺の宮に生き写しだった。
母を失い、祖母の尼君に育てられるこの少女は兵部卿宮の姫君で藤壺の宮の姪だった。源氏はこの少女を自らの手で育てたい旨を、僧都や尼君に願い出るが、少女の幼い年齢もあって、まったく相手にされない。
それにも拘らず源氏は、病から癒え下山した後も少女に執心する。
その頃、藤壺の宮が宮中から里に下がった。源氏は藤壺の宮に仕える王命婦を頼りに、藤壺と夢のような逢瀬を持つ。そして、この一回の密会で藤壺は懐妊する。
ふたりは罪の意識に苛まれるが、源氏は藤壺への思いをますます強めた。
しばし後、紫の上の祖母、尼君が亡くなった。源氏は紫の上を半ば盗み取るようにして、二条院に連れ去った。少女は二条院の暮らしにすぐになじみ、源氏になついていった。
誰も教えてくれなかった『源氏物語』本当の面白さを次回もお楽しみください。